奨励賞受賞記念講演
記念講演
9月5日(土)11:00 ~ 12:00
体験過程を表現するプロセスがもたらしてくれるもの
小坂淑子
(北海道大学 教育イノベーション機構教育推進研究部 学生相談支援センター 講師)
人の生の体験を表現する媒体が言語だけではないということは、広く知られています。臨床場面においても、言語以上に、その人の出す音や、服装や持ち物の色、その人の持つイメージ、話すリズム、動きなどは、その人自身をよく表し、理解に役立っているのではないでしょうか。非言語の表現は、言語の補助のみならず、その人らしさをより普遍的に伝え、文化や時代を超えて理解することを可能にしてくれます。
フォーカシング指向表現アーツセラピー(FOAT®)では、今感じていることを、言葉になる手前の状態で、さまざまに表現するプロセスを大切にします。心理療法場面では、セラピストの技法にクライエントを合わせるのではなく、その瞬間のフェルトセンスにあった表現方法を、クライエントがセラピストと共に見出すことで、自由な表現が促され、そこから意味を創造できるのです。ではセラピストは、どのような表現を、いつ誰に、どのように提案するのでしょうか。その判断を助けてくれるのが、博士論文の研究テーマとなった、表現の象徴様式に応じた、体験との「距離」だと考えています。
この度貴重な機会を賜り、非言語の表現に興味を持つようになったきっかけや、迷子になりながら学んできたこと、研究したこと、海外も含めたFOAT®の動向、これから探究していきたいことなどをお伝えできたらと考えております。
講師紹介

小坂 淑子
慶應義塾大学経済学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、東京成徳大学大学院心理学研究科臨床心理学専攻修士課程修了、大正大学大学院人間学研究科福祉・臨床心理学専攻博士後期課程修了、博士(人間学)。臨床心理士、公認心理師。
TIFI認定フォーカシング・トレーナー&フォーカシング指向セラピスト(with specialization in FOAT®)
主要著書
『フォーカシング指向表現アーツセラピーの臨床適用―体験過程を象徴化する様式と距離―』(風間書房)
共著:『フォーカシング・ハンドブック』(北王路書房)、『フォーカシングはみんなのもの』(創元社)、『新しい事例検討法 PCAGIP入門』(創元社)
翻訳:ピーター・アフォード著『神経科学時代の心理療法』(北王路書房)監訳、ビビ・サイモン著『フォーカシングの心得:内なる知恵の発見法』共訳等