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ワークショップ紹介
WS 1
A person-centred approach to traumatic stress and post traumatic growth
心的外傷と心的外傷後成長に対するパーソンセンタード・アプローチ
David Murphy 先生(ノッティンガム大学)
内容紹介
In this interactive and experiential workshop, we will explore together the application of person-centred experiential counselling in the context of a case of a traumatised client. Person-centred experiential counselling claims to provide a space for the person seeking help to develop their self-understanding, self-acceptance and reconnect to their organismic valuing system.
The process of change is one of moving from fixity to fluidity, from stasis to process. Importantly, as person-centred experiential counselling is engaged in the process of learning, from the inside-out, the kind of learning arising from the processing of traumatic life events can be framed as post-traumatic growth. Such changes include living life in a more existential manner including being more open to experience and changingness, focusing on and investing in relationships that are growthful and constructive, and living life in a more extensional manner.
In this workshop, I will briefly present an introduction to the concept of post-traumatic stress within the person-centred experiential paradigm. I will introduce two cases where clients had experienced quite different traumatic experiences early in their life. In one case, I shall present evidence of my way of working as a person-centred experiential counsellor using video clips. There will be an opportunity to discuss and reflect together on the video examples and to practice the approach in small groups. There will be further opportunity for reflection and considering the implications for your own counselling practices.
このワークショップでは、トラウマを抱えたクライアントの事例を背景に、パーソンセンタード・カウンセリング(person-centred experiential counselling)の応用を共に探求します。パーソンセンタード・カウンセリングは、支援を求める人が自己理解と自己受容を深め、有機的価値体系との再接続を図る場を提供します。
変化のプロセスとは、固定的なものから流動的なものへ、停滞からプロセスへと移行する過程です。重要なのは、パーソンセンタード・カウンセリングがその人の学びのプロセスに関わるため、トラウマ的な人生の出来事から生じる学びは「心的外傷後成長」として捉えられる点です。こうした変化には、経験や変化により開かれ、成長的で建設的な関係性に焦点を当てるといった、より実存的な生き方、そしてより発展的な生き方が含まれます。
本ワークショップでは、パーソンセンタードのパラダイムにおける心的外傷後ストレスの概念について概説します。クライアントが幼少期に経験した全く異なるトラウマ体験を扱った二つの事例を紹介します。一方の事例では、ビデオクリップを用いて、私がパーソンセンタード・カウンセラーとして実践している手法の具体例を示します。ビデオ事例について共に議論し考察する機会を設けるとともに、少人数グループでこのアプローチを実践する練習を行います。さらに、各自のカウンセリング実践について振り返り、検討する機会にもなればと思います。
講師紹介
David Murphy
David Murphy氏はイギリスのノッティンガム大学の教員でPerson-Centered Therapy (PCT) のセラピストです。3回目の来日となる今回、当学会に招聘いたしました。イギリスの医療現場でPCTの実践が衰退しつつある中で、彼はPCTを、医療パラダイムとは異なる、人生における成長パラダイムによる教育的な実践であるとする見方を提案しています。これからのPCT(PCA)を私たちがどのように捉え、実践していくか、一緒に考えていきたいと思います。
定員:50名
WS 2
ささやかな話、確かなことⅡ
ー中動態的視座と感受に基づく表現と共有の試みー
村久保 雅孝 先生(日本心身医学協会)
土屋 貴哉 先生(佐賀大学)
田口 友美 先生(佐賀大学)
内容紹介
もう30年ほど経ったでしょうか。私は西表島辺りの海に浮かんでいました。そのとき不意に私は感じました。海と一体化しているというより、海と溶け合っている感じ。水と皮膚の界が無くなり、まさに溶け合っている感じ。その感じはどこからかやってきたようでもあり、私の中から生まれてきたようでもあり、確かなことは、溶け合っている感じそのものでした。
かつて、中動態という態があったそうです。意図を持って能動態的に「する」のではなく、何か外からの作用によって受動態的に「される」のでもない。「なる」という感覚。ある事柄と共に在る時、私はどうなるのでしょう。
ここでは、現代美術家・土屋貴哉の存在とその作品と共にあることをきっかけに、他者には意味を持ち得ないかもしれませんが、あなたの中にはかすかに、しかし確かに生まれただろう「それ」を味わいつつ、言葉にしてみようと思います。そして語り合い、共有する中で「それ」はより輪郭をはっきりさせてくれるかもしれません。あるいは、新たな何かが生まれてくるか、新たな何かに生まれ変わるかもしれません。頼りになるのは、あなたの感じとあなた自身との対話です。なんだか違うとか、しっくりくるとか、そういった感覚を頼りに「それ」と共にいてみましょう。
そして、さらなる試みとして、「それ」を音や音楽の姿で表現してみませんか。自分の感覚を頼りに音を探し、ちょっとだけ奏でてみる。なんだか違うとかしっくりくるという感覚が、よりはっきりしてくるかもしれません。音楽療法士の田口友美が、新たな共有と展開の試みをサポートします。
目的的に何かを目指してはいません。私たちはどこまで行けるか、試しにやってみましょう。
中動態や心理学、現代アート、音楽などに関する専門的な知識や経験は必要ありません。熟練の能力や技術も不要です。みなさんの中に生まれた言葉や物語、音や音楽が重なり合ったとき、思いもしなかった「わたし」や「あなた」が姿を現すかもしれません。
人は自覚できることよりはるかに多くのことを感受しています。どうぞ、興味本位で来てください。
講師紹介
村久保 雅孝
臨床心理士。公認心理師。
実践や研究ではその人の目線や体験を拠り所とし、主観の世界や個々の物語を重視している。「なぜ」を問うより「どのように」に関心を向けている。
「響き合うアート―美の広がり、美術の広がりー」(佐賀大学美術館展.2023)を機に土屋貴哉に遭遇。
日本心身医学協会評議員。福岡大学非常勤講師。元・佐賀大学医学部准教授。
土屋 貴哉
現代美術家。
1990年代より日常生活を支えるシステムや物にシンプルな方法で介入し、知覚に揺さぶりを起こす作品を多様な媒体・形式にわたり発表している。
「響き合うアート」(前出)以来、「ささやかな話、確かなこと」(太田市美術館.2024-25)、「あなたの話を聴かせて下さい(天空の芸術祭2025WS)」(東京芸術大学と東御市による域学連携事業)で、村久保雅孝と協働WSを行っている。
佐賀大学地域デザイン学部教授。
田口 友美
日本音楽療法学会認定音楽療法士。公認心理師。保健師。
中学校および特別支援学校の音楽教師を経て、音楽療法に興味を持ち佐賀大学医学部で保健師資格を取得。音楽療法士、公認心理士、保健師(公衆衛生)の3つの専門性を融合させ、コミュニティ音楽療法や心身と音楽との関係性を探求する傍ら、地域サロンや障害者施設・介護施設、失語症サロンや医療職者など多岐にわたる領域で音楽療法を実践している。
「天空の芸術祭」(前出)から村久保、土屋に合流。
佐賀大学医学部助教。佐賀県音楽療法士会会長。
定員:18名
WS参加にあたって
音楽的素養(楽譜が読めるとか何かの楽器ができるとか)は必要ありません。
動きやすい服装での参加をお勧めします。
WS 3
日常におけるフォーカシング的態度の涵養
-「次の一歩」を見つけるフェルトセンスとのつきあい方-
福盛 英明 先生(九州大学)
森川 友子 先生(九州産業大学)
内容紹介
フォーカシングは、Genlin(1981)によって提唱された、一種の内省の方法です。日常生活の中には、私たちが気づかないうちに構造や習慣に縛られている体験(構造拘束的体験)がたくさんあります。フォーカシング的態度とは、そうした日常の中でフェルトセンスとのつきあいから「次の一歩」を見つけ、新鮮な視点を見つけて体験過程を前に進めていくための姿勢です。例えば、何気ない「歩く」などの動作から見つかる「次の一歩」、からだからのメッセージ(慢性的なストレスによる緊張や痛み、姿勢や動きのクセ)から見えてくる「次の一歩」、アート表現を通して見つかる「次の一歩」、考えや雑念をフォーカシングに持ち込み、そこから生まれる「次の一歩」、などです。これらを通して、チャンネルを切り替えたり、一歩立ち止まってより「ぴったり」な感覚を探したり、ゆっくり表現を試みたり、新鮮な視点でとらえ直してみます。こうした日常でも取り組めそうな簡単なミニワークを通じて、いろいろな角度からクリエイティブな生き方を手に入れていきましょう。優しく自分に触れる時間、楽しく活気ある時間を、一緒に過ごせたら嬉しいです。学生さん、フォーカシング初心者さんも大歓迎です。
講師紹介
福盛 英明
The International Focusing institute 認定フォーカシングコーディネーター イン トレーニング。
九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授。人間環境学研究院(兼任)。
大学では学生相談の実践・運営と臨床心理学の大学院教育を担当しています。フォーカシングに出会ってから30年ちょっとが経ちます。最初、フォーカシングはなんとも難しいなあ、と思っていましたが、習熟するにつれて、フォーカシングは臨床心理実践の中でもとても大事な経験となっているなと思っています。私の場合、日々の生活の中でもストレスを感じたり、生活に閉塞感を感じを感じたりするときに、夜や朝活用して1人でフォーカシングを行って、からだの知恵と対話することをやっています。最近はマインドフルネスも一緒に取り組むことが多く、フォーカシングとマインドフルネスはずいぶん異なるものですが、合わせてやっていって自分の癒やしを行うことが合っているなあと思う今日この頃です。森川先生と一緒にワークショップを担当できてとても楽しみです!
主要著書
『マンガで学ぶフォーカシング入門』監修:村山正治、編著:福盛英明・森川友子, 誠信書房, 2005.
森川 友子
The International Focusing institute 認定フォーカシングコーディネーター。
九州産業大学人間科学部臨床心理学科教授。福岡フォーカシング・フォーラム主宰。
昼間は大学の運営に携わりながら大学生や大学院生に心理学を教え、夜は一般の方にフォーカシングを教えています。
福盛先生と私は九州大学の村山正治先生のもとでフォーカシングを学んだ同級生です。フォーカシングはからだの感じが指し示すものが、確かにそうだと納得感を以て感じられるところが、気に入って続けてきました。近年は「身体の不調に対するフォーカシング」に取り組む他、「5秒でフォーカシング」、道行く人を見ながら「すれ違いざまのフォーカシング」、コンビニの食品を触って確かめる「指でフォーカシング」等、毎日ふざけたことをやりながら、瞬間瞬間のフォーカシングを楽しんでいます。このワークショップではなるべく皆様の生活に活かせるフォーカシングをご提案しながら、新たに見つけていきたいとも思っています。
主要著書
『マンガで学ぶフォーカシング入門』監修:村山正治、編著:福盛英明・森川友子, 誠信書房, 2005.
『フォーカシング健康法 こころとからだが喜ぶ創作ワーク集』編著:森川友子, 誠信書房, 2015.
定員:30名程度
WS参加にあたって
多少、からだを動かしますので、動きやすい服装を用意してください。
WS 4
Self & Community Engaged Art
〜新しい自己・他者とのつながりを見つける旅〜
鬼塚 淳子 先生(東京大学相談支援研究開発センター)
内容紹介
多様な場で実践して来た,自己と自己,自己―他者とのつながりを育むアート表現の活動を,社会的処方のひとつとして提示します。Socially Engaged Art 〜社会とつながるアート〜を,もう少し自分に引き寄せて,自己と周りのコミュニティとのつながりを,アート表現を通して考えます。最終的には,表現は自己の生きる力を活性化し,人とのつながりを媒介し波及する,その過程を一緒に体験していただけたらと思います。
講師紹介
鬼塚 淳子
東京大学相談支援研究開発センター特任助教,学生相談所非常勤カウンセラー,臨床心理士・公認心理師・大学カウンセラー。
アート・表現領域を主体として,学生・生徒へのピアサポート教育と育成,心理臨床,社会的処方からの自己表現グループにおける相互作用の波及・変容研究を行っています。
主要著書
描く,観る,演じる アートの力. 第2章 表現と繋がりと生きる力(鬼塚淳子). 東大アートと精神療法研究会編, 三元社 2023.
じぶん&こころ まなぶBOOK. 村山正治監修・鬼塚淳子編, じぶん&こころ まなぶBOOK制作ワーキンググループ著, 培風館 2014.
こころのワークブック. 村山正治監修・太田列子編, こころのワークブック制作グループ著. インナーイメージドローイング ステップ1〜3(鬼塚淳子). ふくろう出版 2006.
定員:20名程度
WS参加にあたって
参加型のワークショップですので、主体的な参加をお願いいたします。準備物等はございません。
手や服に画材が付着する可能性があるため,汚れてもいい軽装が望ましいです。
WS 5
エピソード記述
鯨岡 峻 先生(京都大学)
山本 知香 先生(音楽療法士)
内容紹介
このワークショップでは、エピソード記述について、その理論的背景や具体的な方法を含めて講義とワークを通して学んでいきます。
エピソード記述は、人と人とのあいだ=「接面」で起こる出来事について、間主観的に感じられたことを鍵として記述・考察するための質的な心理学研究方法です。感じられたことは、目に見えないため数や量に表すことはできません。そのため、客観主義的な研究においては必ず捨象されてきました。しかし、対人実践の場で感じられたことは、次なる関わりを導くための重要な手がかりとなり、実践の展開を大きく左右するもののはずです。エピソード記述は、いくつかの類似した事例を複数取り上げて、その共通項を明らかにするような研究、あるいは取り上げる事例が、研究者の依拠する理論や学派の理論によって説明されてしまうだけに見える研究とは、真逆の方向を目指します。共通項を取り上げて分かったような気になってしまう前に、共通項に括り切れないその人の固有性を「多様性の中の一人の主体の生きる様」として取り上げるときに、エピソード記述が真価を発揮するといえるでしょう。
前半は、エピソード記述の理解に欠かせない関係発達論や関与観察など、理論的背景を含めて紹介します。単なる研究方法としてではなく、人と人とが共に生きるとはどういうことかに迫るひとつの「人間論」とセットで理解することで、エピソード記述の真価を感じてもらえることを期待しています。後半は、個別具体の事例に取り上げられる人の生きる様を捉え、その人の主体としてのありようを浮き彫りにするたにはどうすればよいか、エピソード記述の具体的な方法について紹介します。短い時間ではありますが、実際にエピソードを描くワークを通して、体験的な学びの時間となるよう進めていきたいと思います。
講師紹介
鯨岡 峻
京都大学名誉教授
主要著書
『関係発達論の構築』(ミネルヴァ書房,1999)
『エピソード記述入門 ー実践と質的研究のために』(東京大学出版会,2005)
『エピソード記述を読む』(東京大学出版会,2012)
『なぜエピソード記述なのか ー「接面」の心理学のために』(東京大学出版会,2013)
『子どもの心を育てる新保育論のために ー「保育する」営みをエピソードに綴る』(ミネルヴァ書房,2018)その他多数
山本 知香
音楽療法士
主要著書
「ある自閉スペクトラム症の子どもと音楽療法士の〈出会い〉の考察 音楽の中で自己が析出するとき」・「『出会うということ』をめぐって ―ある自閉スペクトラム症の子どもと音楽療法士の〈あいだ〉に着目して」(笠原広一編『アートの体験を生きる 表現/実践/研究のあいだにひらかれるもの』(学術研究出版,2021)pp.75-118)
「自閉スペクトラム症の子どもとの音楽療法における音・音楽と接面──自己性の育ちへのアプローチ」(鯨岡峻・大倉得史編『接面を生きる人間学―「共に生きる」とはどういうことか―』(ミネルヴァ書房, 2021)pp.131-158)
定員:30名程度
WS参加にあたって
エピソード記述を体験します。筆記用具をお持ちください。
WS 6
One day
ベーシック・エンカウンター・グループ
野島 一彦 先生(九州大学名誉教授・跡見学園女子大学名誉教授)
池辺 さやか 先生(九州大学こころとそだちの相談室)
内容紹介
わが国では、ベーシック・エンカウンター・グループは1970年から実践と研究が行われてきており、50年以上の歴史があるアプローチです。その目的は、自己理解、他者理解、自己と他者との深くて親密な関係の体験です。グループは、ファシリテーターと参加者が「今、ここでやりたいこと、やれること」を自発的にしていく形で進んでいきます。グループでは、相互に「自己開示」、「フィードバック」、「触発」をし合いながらプロセスが進展します。安全な雰囲気のなかでいろいろな思いをのびやかに語り合いたいと思います。
講師紹介
野島 一彦
九州大学・跡見学園女子大学名誉教授
人間性心理学の立場から、主に医療領域、教育領域で個人カウンセリング、グループアプローチに関わってきました。
主要著書
『エンカウンター・グループの理論と実践:出会いと成長のグループ体験を学ぶ』(単著.遠見書房,2024)
『臨床心理学中事典』(監修.遠見書房,2022)
『エンカウンター・グループのファシリテーション』(単著.ナカニシヤ出版,2000)
池辺 さやか
特定非営利活動法人 九州大学こころとそだちの相談室
大学学部ゼミ、大学院ゼミを人間性心理学の立場の先生のもとで学びました。ロジャーズの考え方を大事にしながら、今は所属先のほか、保健医療領域、産業領域で働いています。PCA乗鞍でフロアファシリテーターとファシリテーターをしてきました。臨床歴で若手とは言いづらくなってきましたが、ファシリテーターとしては若手です。
定員:15名
WS参加にあたって
お互いに良いグループ体験をするために、三直の態度(自分に「正直」、他者の話は「素直」に聴く、「率直」に話す)で参加されることをお勧めします。
WS 7
クライエントと関係者に役立つ「見立て」を考える
~PCAの立場から~
永野 浩二 先生(追手門学院大学)
内容紹介
私たちは困難に出会った時、行き詰った時、未来が見えなくなった時に、そうなった原因を知りたいし、現状を理解したいと思う(なぜこうなったのか? 何が今起きているのか?)。また、将来への希望と見通しが欲しくなる。
ここで私が述べる「見立て」は、以下のような内容の一部、または全てを含む。
① 過去・現状についての納得のいく(本人の実感に合う)理解につながる
② 未来についての希望や行動のヒントが得られる
③ 相談相手(カウンセラー)に対して、with感(共に考えてくれている、そこにいてくれる)を感じられる(これはカウンセラーの態度によって伝わるものである)
④ カウンセラーの態度を支えてとして、たとえすぐに①~③が(十分には)得られなくとも、問題に関わり続ける意欲やともかくも生きていく勇気が維持・増進される
Rogers(1977)は、「(州立病院で会ったクライエントに言及して)「彼らは彼らの可能な方法で成長と適応に向かってもがいているということです。健康な人間には奇妙で無駄と思えるかもしれないけれど、その行為は生命が自己を実現しようとする必死の試みなのです」と述べている。「生命の実現傾向」をどう理解していくか、上記の①~④が、クライエントだけでなく関係者やカウンセラー自身に生じるための聴き方や情報共有の仕方について、体験学習も交えながらワークショップを進めていきたい。
一方、クライエントや関係者に直接は「役に立たない見立て」も存在する。私の元に訪れたクライエントの中には、病院や相談所で専門家から伝えられた言葉にひどくショックを受けたり、失望したり、ピントこないために混乱したりした人も少なくない。これらを避けるための方法についても参加者と共に考えたい。
また、本ワークショップでは、クライエントや関係者に役立つ・役に立たないとは別の次元での見立てについても触れる可能性がある。これは、同じ心理師(士)同士や異なる専門家から向けられる無理解や非難・批判から身を守るための見立てである。これを仮に「方便としての見立て」と呼ぶ。「方便としての見立て」は、クライエントやクライエントに親身に関わっている関係者にはおそらく役に立たない。しかし、誠実なカウンセラーの人たちが行っている意味ある行為を守るための役には立つ可能性がある。もし当日、参加者のニーズがあれば、そういった情報も共有したい。
講師紹介
永野 浩二
パーソンセンタードの個人カウンセリング、およびフォーカシングやエンカウンター・グループの実践、研究を続けています。またこの10年は、臨床家のPersonal Developmentに特に関心を持って研究や実践的なワークショップを行っています。
追手門学院大学心理学部教授。
主要著書
「PCAGIP法の実践 対人援助職を支える新しいパラダイム」(共著・創元社,2024)
「パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ――対話・つながり・共に生きる」(共著・遠見書房,2023)
「パーソンセンタード・アプローチの挑戦 現代を生きるエンカウンターの実際」(共著・創元社,2011)
「ロジャーズの中核三条件 共感的理解 カウンセリングの本質を考える3」(共著・創元社,2015)、などがある。
定員:30名程度
WS参加にあたって
参加型のワークショップ形式です。無理のない範囲で、感じたこと、考えたことを共有していきたいと思います。
WS 8
トラウマから見た日本の現在地:
研究・治療の経験から考える
森 茂起 先生(甲南大学)
内容紹介
戦争、大災害といった巨視的な現象から、虐待、いじめ、犯罪などの個人あるいは小集団に関わる現象まで、私たちが生きる社会は、過去から現在に至るまで多くの「トラウマ的(tramatic)」な出来事を経験している。子ども虐待と阪神淡路大震災という同時代に経験し問題化した事象によって、トラウマの視点をもって心理学の立場から実践的に関わる方法が開発、導入され現在に至っている。本ワークショップでは、子ども虐待、戦争、大震災を中心に講師の研究及び実践の経験を共有するとともに、治療としての技法の紹介を通して、人生史におけるトラウマ的経験の整理と位置付けの重要性を理解する。そして、集団が抱えるトラウマ(集合的トラウマあるいは文化的トラウマ)の視点から見て、日本社会が現在どのような状況にあるのかを考えるために、現在の私たちの日常と日本の戦争体験とのつながりを見出すためのグループワークを参加者とともに試みたい。
講師紹介
森 茂起
甲南大学名誉教授
臨床心理士
精神分析的心理療法の実践(IFPS精神分析家)とともに、児童養護施設における子どものケアに長年携わり、虐待を受けた子どもの治療、養育にも関わってきた。阪神淡路大震災後のトラウマ臨床を含む研究および実践のなかで、トラウマ治療の方法論を検討し、ナラティブ・エクスポージャー・セラピーの導入、普及を図ってきた。兵庫県下の子ども家庭センターのアドバイザーとして、あるいは虐待防止専門家会議議長(現在は委員)などとして、児童虐待防止施策にも関わっている。精神分析の領域では、子ども虐待の存在の指摘、トラウマ的作用の重要な理解の提出を行なったシャーンドル・フェレンツィに注目し、翻訳等を通して紹介してきた。
トラウマ研究を背景に、日本の戦争体験に関する研究に携わり、子ども時代に戦争を体験した方々へのインタビューの実施、学際的シンポジウムの開催などを行なってきた。
主要著書
森茂起 (2005). トラウマの発見. 講談社.
森茂起 (2018). フェレンツィの時代―精神分析を駆け抜けた生涯. 人文書院.
竹島正, 森茂起, 中村江里(編) (2023)戦争と文化的トラウマ. 日本における第二次世界大戦の長期的影響. 日本評論社
定員:50名
WS参加にあたって
日本社会とご自身について「トラウマの視点から」考える機会と考え、主体的に主題に取り組んでくださることを期待します。
(学会準備委員:井内・高松より)森先生は、阪神地域の子どもの戦争体験の研究や、トラウマ臨床を行ってこられました。一方、人間性心理学会には、ロジャーズ氏が北アイルランド紛争のさなかの市民達にエンカウンター・グループを行ったり、近年では吉川麻衣子氏が沖縄戦体験者のサポート・グループを展開するなど、「平和の実現に人間性心理学がどのように貢献できるのか」という視点が伝統的にあると考えています。
折しも、昨年は戦後80年の節目でした。最近になってようやく、戦時や戦後の体験を語るようになった方が少なからずおられますが、そうした語りの中には、あの戦争がこの国の虐待やDVの背景に横たわっているのではないかと感じさせられるものもあります。また、戦争はトラウマ体験の最たるものですが、数十年単位の長い時間を経ないと語れない、という事実にも改めて驚かされます。あの戦争の影響や、戦争に限らずトラウマについて知り考えていくことは、心理臨床をしていく上で、また広く社会や平和について考える上で、重要だと考えています。
そこで、森先生のお話をぜひお聴きしたいと考えました。本学会のワークショップ講師としてお招きできて、とても嬉しいです。
WS 9
「わたしたちの自由音楽会」
―そのままの自分を楽しみ、そのままの仲間と楽しむ
音楽を媒体としたパーソンセンタードコミュニティ体験―
村山 尚子 先生(心理教育研究所赤坂)
北田 朋子 先生(東亜大学)
村山 正治 先生(九州大学名誉教授・東亜大学名誉教授)
木村 太一 先生(福岡大学保健センター学生心理相談室)
内容紹介
ロジャーズ理論、PCAの本質は「自分自身である」ことです。このワークショップは自分自身の感覚を、音楽を通して共に楽しみながら体験し、自分の歓び、悲しみも含めて自分自身を探していく試みです。
元々は、福岡で年1回行っている「わたしたちの自由音楽会」が発端となっています。2014年から始めたこの自由音楽会は、「上手に演奏すること」を目的とするのではなく、「それぞれがありたいように、そこにいること」を大切にしています。これまで、子どもや飛び入りの外国人の方、重い病気とともに生きる人、さまざまな人たちと一緒に音楽会を行ってきました。参加者の内的体験が明らかになるように、5回目の時、参加者の感想を書いていただきKJ法を用いてまとめました。それによって「自由」に「音楽を楽し」みながら「挑戦」ができる場、「助けて助けられて」「一緒に創って」いく体験、可能性を信じるなかで「なんとかなる」「共に生きていこう」と思える場…というような言葉が導き出されています(村山尚子・北田,2023) 。
今回のワークショップでは、まずはこれまでの自由音楽会の実践を紹介し、そのエッセンスやそこにPCAがどのように生きているかをご一緒に考えてみましょう。そして、みなさんで実際に自由音楽会を創るプロセスを通して、参加者それぞれが他者とともに自分らしくいる体験となり、豊かな学びの機会となることを願っています。
曲目の候補としては
を考えています。「よろこびの歌」以外は、どの曲をするかを事前のメールのやりとりで、みなさんと決めていければと思います。申込者には楽譜を事前に配布いたします。
講師紹介
村山 尚子
心理教育研究所赤坂主宰・臨床心理士
大阪市立大学生活科学部でコミュニティオーガニゼーション、臨床心理(ロジャーズ理論)を基礎的に学習後、大阪府精神衛生研究所に赴任。以後長年にわたって、ロジャーズ理論をベースに臨床活動、エンカウンターグループ、コミュニティ活動、そして家族の一員として生きてきている。
北田 朋子
東亜大学心理臨床・子ども学科准教授・臨床心理士・公認心理師
幼少期から音楽に親しみ、京都音楽院で音楽療法を学ぶ。その後エンカウンターグループにも参加するなかで、音楽をツールとしてありのままの自分と出会い他者とも出会うような「エンカウンターグループっぽい音楽の場が出来たら…」と思うようになる。「自由音楽会」はこれまでの自分をフルに使っているような場であり、とても大事な体験となっています。
村山 正治
九州大学名誉教授・東亜大学名誉教授・臨床心理士
自由音楽会は毎回参加しているが楽器は何もできない。仲間と一緒に歌ったり、踊ったりするのがとても楽しい。いつかドラムをやってみたいと思っている。リズム感だけはまだあると思う。平和への祈りを込めたい気持ちで、毎回ビートルズの曲を一曲テーマ曲として入れることを希望しています。
木村 太一
福岡大学保健センター学生心理相談室非常勤カウンセラー・臨床心理士・公認心理師
学生相談、スクールカウンセラーなど教育領域で活動。SCサポートグループの展開など、支え合うコミュニティ生成を仲間と実践している。ロックンロールの活動を通して「人が豊かに平和に生きること」を探求中。学会WSとして自由音楽会を実施するのはチャレンジングな試みですが、参加者、講師、会場スタッフみんなで創っていけたらと思います。
定員:20名
お子さんの参加もOKです。人数は流動的に検討します。
WS参加にあたって
引用文献
村山尚子・北田朋子 「わたしたちの自由音楽会」一人ひとりが自分なりに音を楽しめるパーソンセンタード・コミュニティ, 本山智敬・永野浩二・村山正治編, パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ 対話・つながり・共に生きる(遠見書房,2023)
WS 10
人間性心理学臨床1日ゼミ:
自分が関わる臨床実践と論文執筆
中田 行重 先生(関西大学)
石倉 篤 先生(東京未来大学)
内容紹介
普段は臨床活動・対人支援活動をしている本学会の会員の中に、「博士課程には行っていないけど、本学会にただ聴衆・読者として参加するのでなく、もう少し積極的な参加をしたい。ただ、自分は研究論文を書く・発表する方法も知らないし、研究的な視点ももってない」と思っておられる方は結構多いように思います。
そこで、臨床実践をやっている人で研究に取り組みたい、という方を想定して1日臨床心理ゼミのようなワークショップを企画しました。どうやったら自分の臨床を深め、それを研究論文にするか、のゼミです。講師の中田・石倉はPCAの臨床・研究をしていますので、その立場を例にしたワークショップです。研究的な問題意識をどう育みつつ、臨床と研究にどう取りくんだか、という話題提供をしつつ、参加者それぞれが自分の臨床実践と研究の視界が広がるように、自分で文献を検索したり、グループディスカッションをしたりして研究の見通しを立てる1日ゼミ体験です。
研究論文を執筆し、投稿することは博士課程に進学しても楽ではありません。この1日のワークショップで論文が書けるようになる訳ではありません。しかし、論文を書くという問題意識をもち、臨床実践を行うようになると、臨床文献を読んだり学会の大会に参加したりする際、学びに関する自分の構えやフェルトセンスが変わると思います。それぞれの参加者に、その感覚の入り口を示すところまで行けたらいいなと思っていますので、受身的でなく積極的な参加者を募集します。
このワークショップを企画したもう1つの理由は、人間性心理学が大事にしている人間観を絶やさないためです。新しい知識が次々と流入し、人間性の人間観は片隅に追いやられています。それを食い止めるには、その実践の重要性を世の中に発信していく必要がありますが、大学関係者だけではとても足りません。日々の支援活動に取り組んでいる多くの人が立ち上がって、学会全体で発信し、それが運動になっていけるといいなあと思っています。
講師紹介
中田 行重
関西大学人間健康学部教授。博士(学術)。
PCAの心理臨床の実践、および大学院での心理専門職の養成、博士課程の研究指導を行っている。
主要著書
「パーソン・センタード・セラピーの実務」(2022)創元社
「深い関係性relational depthがなぜ人を癒すのか」(2021)創元社
「PCTにおけるセラピストの内的体験とクライエントとの相互作用、および終結後の変化」(2017)心理臨床学研究 35(1), 61-71.
(院生7名との共著)「定時制高校に対する地域臨床的支援の試み(その7)」(2017)関西大学臨床心理専門職大学院紀要7,19-28.
石倉 篤
東京未来大学心理臨床センター特任講師。博士(心理学)。
専門はTグループ研究だが、それが派生し、中学高校大学という現場で、学ぶ者の成長を教育的に促すことと、学ぶ者を心理的に受容することの葛藤を抱えつつ両立する道を模索している。
主要著書
「不登校経験者が通う通信制高等学校における通学の継続に関する一考察」(2022)関西大学心理臨床センター紀要13, 1-11.
「大学生とPCAの教員の対話を通した学び : PCAを生きる態度に着目して」(2025)人間性心理学研究 43 (1), 25-30.
「キリスト教主義の通信制高等学校での教育と心理的支援の並立における自己一致」(2025)東京未来大学研究紀要19, 117-127.
定員:20名
修士課程を修了後、博士課程には行っていないけど、研究を進めたいと思っているがなかなか進まないと思っている人、を歓迎します。
WS参加にあたって
可能ならばパソコン、あるいはタブレットを持参してください(文献検索その他に用いるためですが、スマホでも構いません)。